Ⅰリテール事業の仕事内容

・私は新卒で銀行に入社後、約3年間リテール事業（個人営業）に従事しておりました。

投信や保険を販売したり、相続対策を提案したり。。。銀行員としてリテール事業に従事するとはどういうことでしょうか。顧客は個人及び世帯になるわけですが、それを考えるにあたっては個人のお金の流れを理解する必要があります。なにも難しいことではなく極めてシンプルです。

■①収入→②貯蓄（資産）→③支出

個人は働いたり年金を受け取ったり、まずは収入があります。銀行員としてここをコントロールすることはできません。また個人は生活のために支出したり趣味や娯楽にもお金を使います。顧客の支出をコントロールすることも銀行員の仕事ではありません。「もっと節約してお金を貯めてください」「年2回の趣味の旅行は年1回にしましょう」では大きなお世話意外のなにものでもありません。①収入と③支出は銀行員の立ち入る領域ではないのです。もちろん①と③が顧客にとってどれくらいの規模でその内訳がどうなっているかを把握することは仕事です。ただそれに関して「もっと働いて収入を伸ばしてください」や「贅沢はやめてください」というのは銀行員の業務ではありません。では銀行員は個人（世帯）のお金の流れのどの部分に提案を行うか。それは②貯蓄（資産）の部分です。それは現預金であったり、不動産であったり株式や投資信託等の証券であったりするのですが、誤解を恐れずシンプルに言うと「余っている資産の管理や運用を我々に任せてください。時にそれを殖やしたり管理の手間を省きます。そのかわり各種フィーは頂きます」というのが銀行員の仕事です。なので②の規模が大きい顧客が銀行員にとってはありがたいというのは善悪の問題でなくその通りなのです。②の運用や管理をお任せてくださいの枝葉の部分に投資信託や株、保険があったりアパート建築の提案があるだけです。顧客からしてみれば、銀行に払うフィー以上に経済的に得をしたり、各種手間が省けるのが最低条件です。まずはリテール事業とは②にアプローチしてその運用や管理を任せてもらう仕事なのだと大枠を捉えましょう。細かい枝葉の部分はまた別の機会でお話できればと思います。

Ⅱホールセール事業の仕事内容

・ではホールセール事業（法人営業）はどうでしょうか。これは顧客が企業になるわけですが、リテール事業と同様、企業が事業活動をする上で、どのようにお金をまわしているかを理解するのがスタートです。

■①人・モノ・金・情報を調達→②各種生産活動（付加価値創造）→③顧客へ販売、現金回収

事業活動とはつまるところ①～③の繰り返しです。①～③を永久に繰り返し利益を蓄積していくことが事業活動なのです。企業は人間とは違い「ゴーイング・コンサーン」という概念があって永久に存続するという前提があります。なので文字通り永久にこのサイクルを繰り返すのです。もちろん扱う商品やサービス、やり方なのは変化こそあれ、本質的な仕組みはどこの企業も上記のような①～③のサイクルになります。

ここで銀行員の仕事とはなにか考えてみましょう。まず、①で資金を供給すること、これは銀行員の仕事の本丸です。そのやり方には単純な融資からはじまり様々の手法がございますので、追々お話しましょう。情報を提供することも仕事ですね。ただこれ自体は直接銀行に収益は生みません。企業とのリレーション構築を図る上で利用されます。あとは②を行う上で企業が保有しているあらゆる資産に着目し、そこから資金を調達する術や単純に不動産の売買等を仲介したり、それこそキリがありませんが、それも銀行員の仕事です。あとは③の部分で取引先を斡旋してあげたり。他にも企業が事業活動を行う上で前提となる各種管理（株主の管理や従業員のための年金施策）も銀行員の仕事に入ります。要は企業運営をアウトソースしてもらうことですね。長くなりましたが、ホールセール事業の本丸は資金調達のお手伝いですが、周辺領域にも提案の幅が広がっており、そのため銀行員はそもそも事業活動とはなんぞやという経営の基本概念、コンサルタントが習得しているような内容も同時に習得する必要があるのです。

■まとめ

①枝葉よりもまずは仕事の本質（全体像）を掴もう。

②リテール事業は顧客の貯蓄（資産）の運用、管理を任せてもらうこと。

③ホールセール事業の本丸は資金供給。その他事業活動の運営等、周辺業務も多々あり。

④銀行員はコンサルタント同様、経営とはなんぞやを理解する必要がある。

実際の商品・サービスなどは別の機会にお話しできればと思います。まずは全体像を掴みましょう。それでは金融マンの皆さま、またお会いしましょう。

2020.05